
中古住宅の床鳴りはなぜ起こる?原因や構造と修理点検のチェックポイントを解説
中古住宅を検討していると、「床鳴り」という現象が気になることはありませんか。床を歩くときにギシギシと音がするのは、単なる経年劣化だけでなく、構造や床下の湿気が深く関わっている場合があります。実際に住み始めてから困らないためにも、購入前に原因やチェックポイントを正しく知っておくことが大切です。この記事では、床鳴りが起こる理由や構造、修理方法や点検のポイント、床下湿気の見分け方まで、丁寧に解説します。最後まで読むことで、不安を減らし、安心して中古住宅を選ぶための知識が身につきます。
床鳴りが中古住宅で起こる理由と構造の関係
中古住宅で床鳴りが起こるのは、主に構造上の経年劣化や湿気環境による木材の変化が関係しています。戸建て住宅では「大引き(おおびき)」や「根太(ねだ)」と呼ばれる床を支える構造材が、時間とともに緩んだり腐食したりすることで床材にたわみや摩擦が生じ、「ギシギシ」「ミシミシ」とした音が発生しやすくなります。
一方、中古マンションでは二重床構造が採用されていることが多く、床材と下地層の間に防音材などが挟まれています。ただし、床材の施工が甘かったり湿度による木材の膨張・収縮が繰り返されることで、構造面では戸建てと異なる形で床鳴りの原因となります。
さらに、床下の湿気や通気不良は、床材や構造材に悪影響を及ぼします。湿気によって木材が膨張しやすくなり、収縮時に音の発生条件が整いやすくなるほか、含水率が高いとカビや腐朽菌、さらにはシロアリ被害のリスクが高まります。
以下は、構造と環境から見た床鳴りの主な要因を整理した表です:

| 要因 | 内容 | 関係する構造・環境 |
|---|---|---|
| 根太・大引きの劣化 | 歳月とともに緩みや腐朽が発生 | 戸建ての床構造 |
| 床材の伸縮 | 温湿度変化による木材の収縮・膨張 | 戸建て・マンション共通 |
| 床下の湿気 | 含水率上昇による腐朽・シロアリ促進 | 床下通気・断熱性能 |
このように、床鳴りは構造的要因と環境的要因が複合することで生じやすくなります。特に中古住宅の場合は、築年数や施工当時の仕様、床下の通気・湿気状況をしっかり確認することが、購入検討者にとって重要なチェックポイントとなります。
床鳴りの原因を見極める点検とチェックポイント
中古住宅の購入前に、床鳴りの原因を自身で確認するためのチェックポイントを整理しました。まずは室内の観察から。歩いてみて「ギシギシ」と床鳴りがする場所や、特定の箇所で沈みや柔らかさを感じる場所がないか注意深く確認しましょう。ビー玉を使って傾きの有無を調べるのも有効です。こうした症状は、下地材や構造部の劣化、床組の緩みが原因である可能性があります 。
次に床下の湿気やシロアリのリスクをセルフチェック。点検口や床下収納口を開けて、中の湿気、カビ臭、蟻道(シロアリが作る土の通り道)の有無、羽アリの抜け殻などがないかを確認しましょう。湿気がこもっていたり、蟻道が見られたりする場合は、床下が劣化している可能性があります 。
また、軽微な床鳴りが構造上の重大な問題かどうかの判断には基準があります。単なる経年による小さな音や沈みであれば、比較的軽度といえますが、床全体の傾きや広範囲の沈下・腐食、シロアリ被害の兆候がある場合には、専門のホームインスペクションを受けるべきです。専門家による床下点検は、湿度、カビ、シロアリ、配管の水漏れなどを詳細に調査し、安全性の判断に欠かせません 。
以下に、購入前のセルフチェックポイントをまとめた表をご覧ください。

| チェック場所 | 確認内容 | 着目ポイント |
|---|---|---|
| 室内(歩行時) | 床の鳴き、沈み、傾き | ビー玉で傾きを確認、異音があるか |
| 床下収納・点検口 | 湿気、蟻道、羽アリ、カビ臭など | 湿った土、土の盛り上がり、異臭の有無 |
| 専門家による点検 | 床下全体の構造・被害状況 | 湿度測定、配管漏れ、シロアリ被害の有無 |
このような観察と点検を通じて、軽微な床鳴りと重大な構造上の問題との違いを見極めることが、中古住宅購入において非常に重要です。安心して暮らせる住まい選びに、ぜひご活用ください。
:床鳴りへのDIY対応とその限界
まずは軽度なケースであれば、次のようなご自身でできる対策が有効です。たとえば、隙間に補修剤を注入して摩擦を軽減する方法です。ホームセンターなどで購入できる補修剤を、床材の継ぎ目や音が鳴る部分に注入し、音の軽減を図ります。ただし、全ての床鳴りに効果があるわけではなく、あくまでも一時的な対応となる場合もあります。
また、釘やビスを打ち込んで床材と下地材を強く固定する方法もあります。隠し釘を使えば目立たず、DIYでも可能です。ただし、フローリングを傷つけないよう慎重に行う必要があります。さらに、注入式の発泡ウレタン補修キットを利用する方法もあります。穴を開けて注入し、硬化後に浮きや反りを抑えるもので、比較的簡単に扱える製品も市販されています。
さらに日常的な予防策として、室内の湿度を適切に管理することが効果的です。たとえば除湿機や加湿器で湿度を50~60%に保つと、木材の伸縮を抑えられ、音の発生をコントロールできます。また、防音カーペットやマットなどを敷くことで、振動や摩擦音を吸収し、床鳴り感覚を軽減することも期待できます。
とはいえ、DIYには限界があります。たとえば、根太や大引きのたわみ、床下構造の劣化、シロアリ被害などが床鳴りの原因である場合です。このような構造的な問題が疑われるときは、やはり専門業者による診断や補修が必要です。DIYでの対応は応急的な軽減にはなっても、根本解決には至らない恐れがあります。
以下に、DIY対応の内容とその限界を整理しておきます。

| DIY対応内容 | 対象となる床鳴りの程度 | 注意点・限界 |
|---|---|---|
| 補修剤の注入 | 軽度なさね鳴りや摩擦音 | すべての音に効果なし、変色・使用過多注意 |
| 釘・ビスによる固定 | 床材のわずかな緩み | 床の損傷に注意、構造的問題には非対応 |
| 湿度調整・カーペット敷設 | 摩擦音の軽減、湿気による音抑制 | 応急処置的、根本改善にならないことも |
以上のとおり、まずはDIYで音を抑えてみるのは有効な手段ですが、構造部の損傷や広範囲の問題の可能性がある場合は、専門家による点検や補修を検討されることをおすすめいたします。
修理対応と費用の目安、購入後のメンテナンス計画
中古住宅における床鳴りの修理には、部分的な補修から構造的な下地や根太の工事、全面張替えまでさまざまな対応方法があります。それぞれの費用目安を把握することは、購入後の安心に直結します。
以下の表に示すように、簡易な補修から構造材の交換、大規模な張替えまで、修理内容ごとに費用や特徴が異なります。

| 修理方法 | 費用目安(一箇所または相当範囲) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 部分補修(固定・補修剤等) | 数千円~3万円程度 | 軽度の床鳴りに対応可能。DIYでも対応しやすい |
| 床板の固定や下地補修 | 1万5千~5万円程度 | 業者による簡易補強で、比較的短時間対応可 |
| 根太・下地の補強・交換 | 4万~15万円以上 | 構造への影響がある場合の修理。工事日数も長め |
(こちらは標準的な事例であり、実際の費用は建物の状況や地域により変わります)
具体的には、簡易な部分補修であれば数千円から数万円で対応可能ですが、下地から構造的な補修が必要なケースでは数十万円が必要になることもあります。福島県を中心とした事例では、部分補修で1万5千円~3万円、下地交換で2万5千~5万円、根太の補修で4万~8万円、全面張替えでは15万~30万円という実例もあります。
修理を放置すると、床下の湿気やシロアリ被害が進行し、後により高額な補修が必要になる恐れがあります。初期段階での対応が結果的に費用を抑える鍵となります。
購入後は、定期的な点検と湿気対策の計画を立てることが重要です。床下の湿度をチェックし、必要に応じて換気や換気扇の設置、防湿シートの敷設などを行うことで、床鳴りの再発予防につながります。また、一定期間ごとに床の状態を専門家に診てもらうことをおすすめします。
まとめ
中古住宅や中古一戸建て、中古マンションの購入を考える際、床鳴りは避けて通れない検討ポイントです。床鳴りの多くは構造や経年劣化、湿気環境が関係して発生します。購入前の段階で床や床下の状態を丁寧に点検し、湿気やシロアリの兆候にも注意を払いましょう。軽度な鳴りであれば自ら対策できる場合もありますが、構造部分の劣化や湿気の影響が疑われるときは早期に専門家の点検や修理を検討することが重要です。しっかりとした点検と適切なメンテナンスの計画を立てることで、中古住宅への安心した暮らしが実現できます。